2021年03月06日
企画展「ひなまつり展2021」のご紹介⑦ ~地域に残るお雛様 2~
みなさん こんにちは。
企画展「ひなまつり展2021」のご紹介の第7回として、各地に伝わる雛人形の続きについてお話したいと思います。
〇地域に残るお雛様
前回はお守りとしてのお雛様や神社・お寺に伝わるお雛様について紹介しました。
今回は伝統工芸や地域の習俗と結びついたお雛様についてお話します。
・伝統工芸としてのお雛様
薩摩糸びなは、鹿児島県指定伝統的工芸品です。
特徴は、顔がなく、麻糸が髪に見立てていること、そして、着物は何枚もの紙を重ね十二単衣とし、きらびやかな「垂れ絵」が描かれています。
〈薩摩糸びな〉
大内人形は、指定伝統的工芸品(経済産業大臣指定)の大内塗の技法を用いた雛人形です。大内塗は山口県で室町時代以来の歴史があるとされていますが、白木の人形に塗り師が漆を何度も塗り重ねて作られています。
おちょぼ口の表情が何ともいえません。
〈大内人形〉
鳥取県鳥取市用瀬といえば、流し雛で有名な地域ですが、田舎雛と呼ばれる雛人形も用瀬の柳屋さんで作られていたそうです。
現在は休業中とのことで、求めることはできませんが、郷土玩具の愛好家からは人気が高いそうです。伝統は失われやすいものです。
ちなみに向かって左が男雛(烏帽子あり)、右が女雛(冠あり)です。
〈田舎雛〉
・八朔のお雛様
以前、松本の七夕雛を紹介した時に触れましたが、夏にお雛様を飾る地域もあります。
長崎県壱岐市でも八朔(旧暦8月1日に豊作を祈願する日)用の紙雛(「ヒメゴジョサマ」)を作って、贈る風習がありました。
ヒメゴジョサマには、オキヌという着せ替え用の紙雛と一対の茶袋があり、初めて八朔を迎えた女の子の家へ、この八朔雛におしろい花を添えて持って行きました。雛を贈られた家では表座敷の長押(なげし)にそれを貼りつけ、おしろい花は神棚へ供えました。
雛祭りと夏の行事が合わさった、不思議な祝い方ですが、雛祭りの地域での受け入れの多様さを感じます。
〈壱岐の島八朔雛〉
こうした郷土の雛人形を見ていると、雛祭りの原形を見ているようですね。